生きた言葉のちから 

日本全国、さらに世界中の自然災害、被災者の皆さまに心からお見舞い申し上げます。

皆さま今夏の猛暑のお疲れは出ていらっしゃらないでしょうか？今、5類移行とは言えコロナ禍は第9波ピークに入っているようで、そこへ季節外れのインフルエンザ、エアコンと暑さの気温差からの自律神経不調……皆さまどうかお体をお大事になさってくださいませ。

 

皆さま、マルティン・ルーサー・キングさんと言うお名前の方はご存じですか？アメリカ人でもともとのご職業が牧師さんでしたので「キング牧師」と呼ばれることが多いです。黒人の方です。高校や大学の英語の授業でこの方の演説にふれた方もいらっしゃるかもしれませんね。

牧師さんをされているうちに、過酷な人種差別と闘い、白人と同等の公民権を得るための活動のリーダー的存在となり、1963年8月28日、首都ワシントンに25万人の支持者を集めて「非暴力の大規模デモ」の「ワシントン大行進」を行い、有名な「I have a dream.」私には夢がある、いつか平等な世の中になり黒人が自由に活動できる日が来るように…と演説をなさいました。

このページでは政治、宗教…のお話はいたしません。

皆さまにお伝えしたいのは「生きた言葉のちから」です。2023年8月、この演説からちょうど60年と言うことで、ワシントンにある「国立アフリカ系米国人歴史文化博物館」でご本人の手による演説原稿全体が初めて公開されました。ところが、演説中何回かくりかえされた「I have a dream.」はどこにも見当たらないそうです。なぜなら…

ご自身がとても良く考えられたにちがいない演説原稿に沿って話していたところ、群衆の中の友人から「あなたの夢を話して！」と声が飛んできました。するとキング牧師は一拍置いて、演説原稿を横に押しやり、群衆をまっすぐ見つめてこう話し始めました。「I have a dream.」私には夢がある、と。演説はその後もまだまだつづきましたが、その大部分は原稿にないその場語り（即興）、それまでは原稿に目をやっていたにも関わらず、それ以降はお顔をまっすぐ群衆に向けておられたそうです。そしてその部分がのちに「歴史的演説」として多くの人々の耳や目に触れるようになりました。

　25万人の群衆の、差別されたがゆえの願いや苦しみ、希望、そこから来る熱気があのような力強い演説を生成しました。演説原稿がなくても群衆からまっすぐ伝わる気持ちを受け取ることで心からお話され、それが群衆の心に伝わりました。心から発せられる生きた言葉にはたいへんな力があるのですね。

何気なく見ている本、映画、TVの中には、実像であれ虚構であれ、心に響く言葉にめぐりあうことがあります。「こんなことをこんな風に話せたらいいのになあ…」と思って見聞きしております。私は、皆さまができるだけたくさん「生きた言葉」にめぐりあい、よりいっそうお力を手にされますように祈っております。